校長代理のハッピーです。今回は「ハッピーの世の中ウォッチング」として、
建設資材の高騰、特にコンクリート価格の上昇が、私たちの生活に密接に関わるマンション価格に
どのような影響を与えているかを見ていきましょう。

1. 生コンクリート値上がりの背景

マンション建設で不可欠な生コンクリート(レディーミクストコンクリート)の価格上昇には、
複数の要因が絡み合っています。

  • 原材料費の高騰: 生コンクリートの主原料であるセメント、砂、砕石などの価格が
    世界的に上昇しています。特にセメント製造時に発生する二酸化炭素排出規制の強化など、
    環境負荷への対応コストも上乗せされています。
  • 物流コストと人件費の上昇:
    • 2024年問題に代表される物流業界の構造的な変化により、
      生コンクリートの運搬費が大幅に増加しています。
      生コンは製造から打設までの時間制限があるため、輸送費の増加は避けられません。
    • 建設業全体での人手不足が深刻化しており、労働者を確保するための労務費(人件費)が継続的に上昇しています。
      この労務費の上昇は、鉄筋コンクリート造であるマンションの建設コストに
      特に重くのしかかっています。

2. マンション建設費への具体的な影響

マンションは鉄筋コンクリート造(RC造)が主流であるため、コンクリートの値上がりは
建設コストに直結します。

  • 工事原価の過去最高更新: 建設費指数(東京地区など)を見ると、
    マンションの工事原価は過去最高を更新し続けています。
    この上昇要因の筆頭に生コンクリートの値上がりが挙げられています。(出典1)
  • 価格上昇の継続: 鉄筋や人件費なども含めた建築コスト全体がこの10年間で大幅に上昇しており、そのコスト増は最終的に新築マンションの販売価格に転嫁されています。
    今後も資材価格と人件費が高止まりする傾向にあるため、
    新築マンションの価格は右肩上がりが続くと予測されています。(出典2)
  • 地方都市での影響: コスト高騰の結果、特に都心部以外では、
    土地代をゼロとしても事業採算が合わないエリアが出てきています。
    また、地域によっては生コン工場が減少し、
    物理的にコンクリート建物の建設が難しくなるという課題も指摘されています。(出典3)

3. 今後の不動産市場への影響

コンクリートの値上がりを中心とした建築費の高騰は、
不動産市場に以下のような構造的な変化をもたらしています。

  • 新築価格の高騰と供給戸数の減少: 建築コストの予測が難しくなり、
    デベロッパーがプロジェクトの計画を見直したり、延期・中止したりする事例も出てきています。その結果、新築マンションの供給戸数が減少傾向にあり、限られた物件を高価格で取り合う状況が続いています。(出典4)
  • 中古マンションの価値再評価: 新築価格が高すぎるため、比較的建設費が安かった2000年代前半に竣工した中古マンションの「つくりの良さ」が再評価され、中古市場の価格も上昇しています。
    特に立地が良い物件は、新築価格に引っ張られる形で高値で取引される傾向があります。(出典5)
  • 低炭素コンクリートへの移行: 環境負荷の低い「低炭素コンクリート」などの
    新技術の開発も進んでいますが、現時点ではコスト高となることが課題となっており、
    本格的な普及には時間がかかると見られています。(出典3)

コンクリートの値上がりは、単なる資材コストの問題ではなく、日本の住宅市場全体の構造を
大きく変える要因となっていると言えます。

出典の例(本記事の分析元情報)

  1. 国土交通省「建設工事費デフレーター」および「不動産価格指数」
  2. 建設物価調査会発表「建築費指数」(RC造マンション)の動向
  3. 不動産経済研究所、東日本不動産流通機構などによるマンション市場動向調査
  4. 国土交通省「公共工事設計労務単価」など、労務費に関する統計データ
  5. 各種専門メディア(日経不動産マーケット情報、住宅新報など)の報道および分析記事