相続や転勤など、さまざまな事情により「住まない家」を取得した場合、賃貸物件としての活用を検討する方も多いでしょう。
賃貸物件として活用すれば家賃収入が入るメリットがありますが、もし物件を売却したくなった場合、借主がいる間は簡単に売却できません。
ただし、こうしたケースでも借主と交渉して退去してもらうか、オーナーチェンジという手法を用いて売却することが可能です。
そこで本記事では賃貸している家を売却する方法について詳しく解説します。
借主のいる賃貸物件は売却できるの?
そもそも借主が住んでいる賃貸物件は、貸主側の都合で売却できるのでしょうか。
借主の立場としては、物件が売却され貸主が変わっても、同じ条件で利用できるなら大きな影響はないので、貸主が変更する「オーナーチェンジ」であれば、問題は起こりにくいでしょう。
しかし、築年数が古く買い手がつかないような物件の場合、借主に退去してもらってから売却するケースもあります。
この場合、もし賃貸借契約期間中であれば、貸主側に「正当事由」がある場合を除き、借主の承諾を取らない限り売却はできません。
契約期間後に関しては、普通借家契約と定期借家契約によって異なります。
普通借家契約の場合、契約期間中だけでなく、期間満了後も借主が「更新」を希望するのであれば、貸主側に正当事由がない限り、更新拒絶できないことが借地借家法によって定められています。
こうしたケースでは、立ち退き料を支払って退去してもらうのが一般的です。
一方、定期借家契約の場合、原則として更新がされず、契約期間が満了すれば退去となるため、立ち退き料を支払わなくても良いとされています。
オーナーチェンジの特徴とは
オーナーチェンジとは不動産の所有者がその不動産を売却するとき、契約中の借主と引き続き賃貸借契約を継続することを指します。
そのため、不動産を購入した方が新たなオーナーになり、借主は新しいオーナーと賃貸借契約を結びます。
オーナーチェンジの場合、借主は引き続き同じ家で暮らせるため、家賃などに変更がなければ、影響は小さいといえます。
また、新しいオーナーにとっても、賃貸借契約が継続した状態で物件を購入できるため、初めから安定した家賃収入を得られるメリットがあります。
オーナーチェンジの手順とは
オーナーチェンジをする場合、以下のような手順で進めます。
①借主にオーナーチェンジの意向を伝える。
②オーナーチェンジ物件として売却に出す。
③新しいオーナーと借主で賃貸借契約を結ぶ。
④物件の所有権を移す。
まずは借主に対して、オーナーチェンジの意向があることを伝えましょう。
決まってから伝えるのでなく、検討段階で相談すれば理解も得やすくなります。
そこで借主の同意を得られたら、不動産の売却先を探します。
売却活動は不動産仲介会社に依頼するのが基本です。
売却先が決まった後、新しいオーナーは現在の借主と新たな賃貸借契約を締結します。
このときの契約で、現在の賃貸借契約の条件や期間を引き継ぐかどうかはケースバイケースですが、同じ条件であれば借主も同意しやすいでしょう。
そして不動産の所有権が新オーナーに移転すると、オーナーチェンジが完了します。
オーナーチェンジでは不動産を売却したいオーナーにとって、手続きが簡素化されるだけでなく、購入する側のオーナーも収入を確保することができます。
一方、借主は新たな住居を探すことなく、同じ環境のまま住み続けることができるので、双方にとってメリットのある手法といえます。
オーナーチェンジの注意点
オーナーチェンジを考えている不動産オーナーが売却を進めるときは、以下の点に留意することが重要です。
・借主への通知を早めにする。
・賃料や契約条件をできるだけ維持する。
・新オーナーを信頼してもらう。
まずオーナーチェンジの意向を借主に早めに伝えることが大切です。
また、オーナーチェンジ後の賃料や契約条件は、現状維持とするのが望ましいでしょう。
賃料や契約条件の変更は、借主にとって負担となる可能性があるためです。
物件を購入する新オーナーがどんな人が説明し、信頼を得ることも重要です。
借主は新オーナーが賃貸契約を遵守し、適切な管理やメンテナンスを行ってくれることを期待しています。
まとめ
オーナーチェンジは、売却したい物件オーナーと引き続き賃貸契約を継続したい借主の双方にメリットをもたらす手法です。
ただし、契約の変更や手続きには慎重さが必要です。
家賃などの条件に変更がない場合でも、賃貸経営においてはオーナーと借主との信頼関係が重要なので、特に新しいオーナーの紹介は丁寧に行うようにしましょう。
一方、借主の退去が必要なケースでは、個人で対応するのは非常に困難です。
お悩みのときは、不動産会社や弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。