結婚を機にマイホームを購入する夫婦は多くいらっしゃいます。

夫婦で住むための不動産を購入する場合、どちらかの単独名義で購入するのが一般的ですが、夫婦共有で購入する方法もあります。

夫婦共有で購入すれば二人分の年収や資産が考慮され、住宅ローンの上限額を増やせるなどのメリットがあるので、特に共働きの夫婦は検討の余地があるでしょう。

一方、共有名義にした場合、将来離婚した際の処理が複雑になるなど、リスクも少なくありません。

そこで本記事では、夫婦共有で不動産を購入する場合のメリットとデメリットについて解説します。

不動産を夫婦共有で購入するメリット

不動産を夫婦共有で購入する主なメリットを3つ紹介します。特に共働きの方、住宅ローンを活用する方はよく把握しておきましょう。

住宅ローンの借入れ限度額を引き上げられる

住宅ローンを組む場合、契約者の年収や勤務先、資産などによって借り入れの上限が決まります。

夫婦共有で住宅ローンを組む場合、夫婦二人分の収入や資産を考慮して審査を行うため、共働きの夫婦であれば、借入れ限度額を引き上げることができるでしょう。

住宅ローンを共有で組む方法としては、「収入合算」や「ペアローン」がありますが、それぞれ特徴が異なるので、違いをよく把握したうえで選択することが大切です。

なお、収入合算とペアローンの違いは以下の記事内で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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相続税対策になる

相続税はすべての相続財産に対して課せられる税金です。

不動産も相続税の対象となり、所有している不動産の評価額に対して一定の税率をかけて計算します。

そのため、相続した不動産の評価額が高いほど、相続税も高額になりますが、共有名義にしておくと持分が分割されるので、税額負担を減らすことが可能です。

例えば夫が亡くなり、妻が評価額3000万円の家を相続するケースで考えると、もし夫名義の家であれば、3000万円全額に対して相続税が課税されます。

これに対して、共有名義(持ち分50%)であれば、相続税は半額の1500万円にしか課税されないため、有効な節税対策となります。

また、相続税には基礎控除がありますが、相続財産の評価額が基礎控除の金額以下であれば、相続税はかかりません。

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるので、大体の目安を把握することをおすすめします。

住宅ローン控除や団信を二人分活用できる(ペアローンの場合)

ペアローンは夫婦が個別に住宅ローンを借り入れる2本立てのローンなので、住宅ローン控除もそれぞれが適用できます。

住宅ローン控除とは、年末時点のローン残高のうち0.7%を最大13年間、所得税や住民税から控除できる制度であり、二人分活用できれば、大きな節税につながります。

また、団体信用生命保険も夫婦それぞれが加入するので、万が一、何かあったときの対策もしっかりと取ることが可能です。

不動産を夫婦共有で購入するデメリット

反対に夫婦共有とした場合に考えられるデメリットを紹介します。最初に共有名義にしてから変更するのは困難なので、リスクを理解したうえで判断することが大切です。

離婚した場合のリスクが高い

住宅ローンを組んでいる場合は、離婚したときのリスクが高くなります。

ペアローン・収入合算を利用する場合、夫婦が離婚したとしても、ローン契約が終了することはないので、連帯債務者や連帯保証人としての立場も継続します。

したがって、離婚後に債務者となっている方が住宅ローンの返済を怠ると、連帯保証人や連帯債務者となっている方に返済義務が生じることになってしまいます。

離婚した場合は、夫婦で住んでいた家を売却する方が多い傾向にありますが、もし売却してもローンを完済できなかった場合は、ペアローン・収入合算の責任が残ってしまうので、難しい悩みを抱えることになるでしょう。

容易に売却できなくなる

夫婦共有で不動産を所有している場合、単独では売却はできず、お互いが合意しなければ行えません。

そのため、どちらか一方の判断で容易に売却ができなくなります。

離婚時においても、夫婦の一人が売却したいと主張しても、もう一人が合意しなければ売却はできないため、意見が合わない場合、複雑な問題に発展するリスクも考えられます。

また、夫婦で持分割合に差がある場合でも、割合の多いほうの意見が優先されることはなく、お互いの合意を得なければなりません。

もし夫婦のどちらかが1%でも不動産の持分を持っていた場合、お互いの合意を得なければ売却できない点に注意しましょう。

二人分のローン諸経費がかかる(ペアローンの場合)

ペアローンは住宅ローン控除をそれぞれが適用できるメリットがありますが、一方ローンを組む際の諸経費が二人分かかってしまいます。

諸経費は融資事務手数料や保証料などですが、数十万円~数百万円ほどかかるケースが多く、借入れ額が多いほど高額になります。

ローンの年数や金額によっては二人分の住宅ローン控除よりも、諸経費のほうが高くついてしまうケースもあるので、損をすることがないように事前にシミュレーションすることをおすすめします。

まとめ

共働き夫婦が増加する中、共有で不動産を取得すれば、理想のマイホームを購入することもできるかもしれません。

一方、住宅ローンを組んで共有名義にした場合、お互いがリスクを背負うことになるので、事前にしっかりと話し合うことが大切です。

特に将来離婚に発展してしまったときのリスクは、よく理解しておく必要があります。

一度不動産を共有名義にすると、簡単に変更はできないので、慎重に検討するようにしてください。